第29話 お義母さんからの手紙

博士

こんにちは、博士(ハクシ)ちゃんです。
当ブログをご訪問いただき、どうもありがとうございます。

かい

こんにちは、ハクシの夫・カイです。
このブログでは、中卒の夫・カイと博士号を持つ妻・ハクシの日常をご紹介しています。

博士

学歴差があっても、とても楽しく暮らしていますよ!

かい

さて、前回の記事で2人の新居(?)が決まったことについてお話ししました。
今回はその後の話です。

博士

ここまでの関連記事は、下記のリンクから読めます!

この記事の内容

カイの婿入り道具

前回の記事に書いたように、2017年の10月、カイさんはそれまで住んでいた住宅地のマンションを引き払い、私の自宅兼事務所に引っ越して来ました。

しかし何せ私の家は狭い。
研究所の住所として法人登記していた関係で、それっぽい住所にするために都心の超一等地の雑居ビルを借りたのですが、そんなエリアなのでとにかく家賃が高いわけですよ。
したがって広い部屋なんて借りられるはずもなく。
20平米くらいの1ルームにユニットバスとキッチン(当然1口コンロ)がついているだけの、文字通りウサギ小屋みたいな部屋でした。

1人暮らしの時も狭かったのですが、そこで2人暮らしをすることになったので、そこには数多の工夫が必要でした。

そういう訳で、カイさんがうちに持ってきた荷物は、段ボール箱が数個と、あとはギターが一本だけ。
ギターがあるってことは、当然ながら元はエフェクターやらアンプなんかも色々あったのですが、全部廃品回収に持って行って貰いました。


整理するために段ボールを開けて行くと、殆どが衣類でしたが1つ書類関係が入っている箱がありました。

会社の雇用契約書、年金手帳、銀行の通帳などの下に、古い手紙やハガキがたくさん入っていました。
どのハガキもとても古いのか端が黄ばんでいて、貼られている切手もまだ50円です。

差出人は、病気で早逝したカイさんのお母さんでした。

かい

わあー、懐かしいなぁ。母からの手紙です。

そう言ってカイさんが私に手渡してくれたハガキには、こちらでこんなことがあったという報告や、簡単に作れる料理のレシピ、電話が止まっているけど大丈夫かというようなことがしたためられていました。

細いボールペンで書かれた筆跡はとても流麗で、高校を中退して早くに親元を離れた息子のことをいつも気に掛けている、母親らしい細やかな愛情が溢れていました。

アイスの袋、発見

ところで、この段ボールからは書類だけではなく、何故かアイスの袋も出て来ました。

『あいすまんじゅう』と描かれたその包装紙は、きれいに洗われていて、そして他の書類に押し潰されて押し花のようにペチャンコになっていました。

博士

なんでこんなものがここから出て来るんだ…。

博士

な、なんですか、これ

かい

あー、それは…。母と最後に一緒に食べたアイスの袋ですね…。

なんでもカイさんのお母さんが病床に伏せていた頃、カイさんは20代で、既に東京で暮らしていました。
ある日カイさんは山口に帰省して、お母さんの入院先の病院にお見舞いに行ったそうです。

この頃は既に殆ど何も食べられなくなっていたお母さんが、この日は珍しく

「アイスが食べたい」

と言ったそうです。

このことがとても嬉しくて、カイさんは病院の売店で『あいすまんじゅう』を日2本を買って来て、一緒に1本ずつ食べたそうです。


そういうわけでカイさんにとってこのアイスの袋は形見に近いものだったので、大切にとっておいたのですね。


先述したように、カイさんは高校1年の時に、母親が必死で止めたにも関わらず、学校を中退し単身上京してしまいました。
アルバイトだって18歳以上のところが殆どだから、実際に上京後の生活はとても大変だったそうです。
※この辺の詳細は、下記の記事をご参照ください。

お母さんはそれをずっととても心配していて、「山口に帰っておいで」と言い続けていたそうですが、その後もカイさんは郷里に戻ることはありませんでした。

そんなに心配を掛け続けた母親との残り少ない時間の中で、アイスを一緒に食べたことは、それまでの親不孝が少し薄められていくような感覚があったのではないかと思います。

思い出ボックス

そんな大切な思い出が詰まったアイスの袋を、きれいにして取っておき、数少ない「婿入り道具」のひとつとして私の家に持って来たことは、なんだかとてもカイさんらしいな、と思いました。

カイさんは私との生活でも、なんでも大事に取っておく癖があります。

私から送ったプレゼントの包装紙や箱を取っておくのは当たり前で、一緒に出掛けた時のレシートまで、私が捨てようとすると大騒ぎします。

一方で私は、ものを保管しておく空間が勿体ないような気がして、何でも捨ててしまいます。
だから私の家は、一人暮らししていた時は、かなりガラーンとしていました。


とは言えこれからはもうひとりの家ではないので、このたび家の中にカイさん用の『思い出ボックス』を設置しました。

『思い出ボックス』には、一緒に観に行った映画の半券、観光地のパンフレット、私が買ってあげた破れた靴下などなど、側から見たらゴミにしか見えないものがたくさん入っています。

自分だったら確実に捨てているものが部屋の片隅にあるのをふと見るにつけ、

博士

結婚というのは、他人の価値観を自分の人生に取り入れることなんだなぁ

としみじみ思いました。

★★★おわり★★★

かい

最後までお読みいただき、どうもありがとうございました

博士

また次の記事でお会いしましょう!

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